南方熊楠特別賞(平成14年)を受賞された神坂次郎先生(作家)が9月6日に逝去されました。
南方熊楠特別賞受賞時、山折哲雄選考委員長は、選考報告のなかで、先生の研究業績を次のようにご紹介されました。
「知の巨人・南方熊楠」を広めるのに、氏の作品が果たした功績は極めて大きい。
作家による伝記は、虚実を織り交ぜたもの、つまり文学作品として評価されがちだが、氏の『縛られた巨人』はあくまでも事実にこだわって描かれている。氏は執筆のために、翁の足跡を追って熊野山中に入り、また、ロンドンに足を運ぶなど、綿密にデータを集められたそうだ。それゆえに残された文書類に頼ったものとは違い、独自の翁研究の成果が披露されている。
ここに改めて、神坂次郎先生のご功績、並びに南方熊楠顕彰へのご尽力に対し敬意と感謝を申し上げますとともに、南方熊楠特別賞ご受賞時のコメントを紹介し、ご冥福をお祈り申し上げます。
【南方熊楠賞受賞者コメント】
思いもかけず、まことに思いもかけずこのような名誉ある賞をいただけたことに、抑えようのない喜びを感じています。
第一回以来の受賞者は、アメリカ・イギリス・日本の自然科学や人文科学の分野で高名な学者の方々でしたが、このたびはその“学者”の埒外にある文学の徒のわたしと作品に、選考委員会は温かい眼差をむけてくださった。それがなによりもうれしい。
文学といえば熊楠翁が愛し、自任したリテラリーマン(文士)という言葉を思い浮かべ、しみじみと反芻しています。この受賞は、いまも熊楠翁とその周辺の人びとの生きざまにペンを走らせつづけている、はるかなる雄小学校の後輩であるわたしへの「書け、もっと書きつづけちゃらんか」そういう、熊楠翁の励ましなのかもしれません。